- 耳・鼻・のどの病気
耳垢栓塞とは?症状・治療と正しい耳掃除の頻度
はじめに
耳垢栓塞(じこうせんそく)とは、耳垢(耳あか)が外耳道(耳の穴)にたまり、音の通り道を塞いでしまうことで、聞こえにくさや耳の詰まりなどの症状を引き起こしてしまう状態です。耳垢は外耳道の入り口に近い部位にでき、自然に排出されるようになっているため、基本的に耳の奥を掃除する必要はありません。本来は自然に排出されるはずの耳垢が、何らかの原因でたまり、蓄積すると、難聴や耳鳴り、耳の痛みなどを引き起こすことがあるため、耳鼻咽喉科での処置が必要になることがあります。当院では患者さまの状態に合わせた処置を行っていますので、耳垢を無理に取ろうとせず、お気軽にご相談ください。
この記事のポイント
- 耳掃除は耳の入り口から見える範囲だけで十分です
- 家庭で耳掃除をする場合は、月1~2回程度までにしましょう
- 綿棒を奥まで入れると、耳垢を押し込むことがあります
- 耳垢がたまりやすい方の受診目安は、大人・高齢者は6か月ごと、子どもは3~4か月ごとです
- 急に片方の耳が聞こえにくくなった場合は、耳垢と自己判断せず、早めに受診しましょう
※受診間隔はすべての方に定期受診が必要という意味ではありません。耳垢がたまりやすい方や過去に耳垢栓塞を繰り返している方に対する目安です。
耳垢の種類
耳垢には乾性耳垢と湿性耳垢の2種類があり、主に遺伝的な体質によって決まります。どちらも正常な耳垢であり、湿っているから病気というわけではありません。
乾性耳垢
カサカサとした、乾燥した耳垢のことです。コナミミ、ミミカスとも呼ばれ、日本人の約7割がこの乾性耳垢と言われています。自然に排出されることが多いため、無理に耳掃除をしなくていい場合がほとんどです。
湿性耳垢
褐色でアメ状の湿った耳垢のことです。アメミミ、ジュルミミとも呼ばれ、欧米人の多くがこの湿性耳垢の持ち主と言われています。乾性耳垢と異なり、粘着性があるため、自然に排出されにくく、たまりやすいとされています。
耳垢栓塞の主な症状
耳垢が外耳道をふさぐと、次のような症状が現れることがあります。
・耳がつまった感じがする
・難聴(テレビの音量が大きくなる、聞き返しが増えるなど)
・自分の声が耳の中で響く
・耳鳴りがする
・耳のかゆみや痛み、違和感
・補聴器をつけても聞こえにくい
まれに、耳垢による刺激によって、めまいや咳を引き起こすこともあります。
!注意!
難聴の原因が、必ずしも耳垢栓塞とは限りません。中耳炎や突発性難聴など、ほかの病気が隠れていることもあります。特に、急に片方の耳が聞こえにくくなった場合は、「耳垢がつまっただけ」と自己判断しないことが大切です。早期の治療が必要な病気の可能性もあるため、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
耳垢がたまりやすい人の特徴
外耳道には耳垢を自然に外に排出させる自浄作用がありますが、以下のような場合には耳垢がたまりやすいと言われています。
耳垢を奥へ押し込んでいる
耳掃除を頻繁にしたり、綿棒や耳かきを深く入れすぎたりすると、耳垢を奥へ押し込んでしまうことがあります。耳掃除をしたつもりでも、かえって耳垢を奥に押し込み、奥で固まってしまうことがあります。
耳掃除をしすぎている
耳垢は単なる汚れではなく、外耳道の皮膚を保護する役割があります。毎日のように耳掃除をすると、外耳道の皮膚が傷つき、分泌物が増えたり、外耳道が炎症を起こし、腫れてしまうことで、耳垢がつまる原因となることがあります。
耳垢の性状や外耳道の形状
乾性耳垢よりも、湿性耳垢は粘着性があり、固まりやすいという性質を持っています。また、外耳道が狭い方や形状が複雑な方も、耳垢が自然に排出されにくいため、耳垢栓塞のリスクが高いと言われています。
子どもや高齢者
子どもは大人に比べて外耳道が狭いため、少量の耳垢でも耳の穴がふさがってしまうことがあります。また、家庭での耳掃除が難しいことも多く、自分で耳がつまっていると上手く伝えることができないため、知らないうちに耳垢がたまっていることがよくあります。
一方で、年齢とともに耳の新陳代謝が低下し、耳垢を排出させる働きが低下してしまうため、高齢者は耳垢がたまりやすくなると言われています。
!注意!
小さなお子さんの場合、家庭で耳垢を取ろうとした際に、突然動いてしまったり、耳の奥が見えにくかったりすることが多いため、外耳道や鼓膜を傷つける危険があります。耳垢が見えない場合や簡単に取れない場合は、無理に取ろうとせず、耳鼻咽喉科へご相談ください。
また、本人が聞こえにくさに気づいていなくても、ご家族が次のような変化に気づくことがあります。
・テレビの音が以前より大きい
・会話での聞き返しが増えた
・呼びかけへの反応が悪くなった
・補聴器をつけても聞こえにくそう
・補聴器がハウリングしやすくなった
このような場合は、耳垢がつまっていないかを確認することも大切です。
補聴器・イヤホン・耳栓を使用している
補聴器やイヤホン、耳栓などで外耳道が長時間ふさがれていると、耳垢が自然に外へ移動しにくくなり、耳垢がたまりやすくなることがあります。また、蒸れや摩擦によって外耳炎を起こすこともあります。
!注意!
補聴器を使用している方は、耳垢がつまってしまうと、補聴器をつけても音が伝わりにくくなり、補聴器の効果が弱く感じられる場合があります。補聴器をつけても、聞こえが悪いと感じた際には、補聴器のメンテナンスを行うだけではなく、耳垢栓塞がないかも確認する必要があります。
当院で行う耳垢栓塞の治療
耳垢の状態に応じて、主に次のような方法を使用します。
・ピンセット状の器具や耳垢鉗子による除去
・吸引による除去
・耳の洗浄による除去
・点耳薬(耳垢水)を使用後の除去
・顕微鏡や内視鏡で確認しながらの処置
耳垢の硬さ、量、位置、外耳道や鼓膜の状態を確認した上で、安全性を重視した処置を行っています。
一度に取り除くことが理想ですが、量が多い場合や硬く固まってしまっている場合に無理に除去しようとすると、出血や痛みにつながることがあります。その場合は、耳垢水と呼ばれる耳垢を柔らかくする作用がある点耳薬を使用し、数回に分けて除去します。
お子さんの処置について
耳垢を除去する際には、様々な器具を使用しますが、特に小さなお子さんは処置中に突然動いてしまうことや恐怖心から暴れてしまうことがあり、十分な処置ができないだけでなく、逆に外耳道などを傷つけてしまう恐れがあります。安全かつ確実に処置を行うために、保護者の方にしっかり支えていただいた上で、スタッフもお手伝いをさせていただく場合があります。耳垢の量が多い場合や耳垢が硬い場合などは、無理に処置を続けることはせず、耳垢水で耳垢を柔らかくし、数回に分けて除去することもあります。
正しい耳掃除の方法と頻度
耳の奥は原則として掃除不要
前述した通り、外耳道には自浄作用があるため、耳垢は自然に外耳道の入り口まで出てきています。そのため、耳の奥まで掃除をする必要はありません。ご自身で耳掃除をする際は、耳の入り口から1cmくらいまでを、綿棒で優しく拭き取るようにしてください。ご家族にしてもらう際は、耳の入り口から見える範囲だけを掃除してもらうようにしましょう。
普段は、入浴後にタオルやガーゼで耳の入口を優しく拭く程度で問題ありません。
家庭で行う場合も、多くて月1~2回程度に
耳の奥は原則として掃除不要ですが、どうしても家庭で耳掃除をする場合は、月1~2回程度にとどめましょう。
これは「月1~2回の耳掃除が必ず必要」という意味ではありません。耳垢が気にならなければ、耳掃除をしなくても問題ありません。
耳掃除をするときは、次の点に注意してください。
・耳の入り口から見える範囲だけにする
・耳の奥まで綿棒や耳かきを入れない
・強くこすらない
・痛みや出血がある場合は中止する
・取れない耳垢を無理に取ろうとしない
入浴後の毎日の綿棒はおすすめしません
「耳の中に水が残っている気がする」という理由で、入浴後に毎日綿棒を使用する方がいます。しかし、綿棒を奥まで入れると、耳垢を押し込んだり、外耳道の皮膚を傷つけたりする可能性があります。
入浴後は、耳の入り口をタオルで優しく拭く程度で十分です。耳の中に水が入った感じが続く場合は、無理に綿棒を入れずに当院にご相談ください。
小さなお子さんの耳掃除について
子どもの耳は外耳道が狭く、家庭では耳の奥まで確認できません。また、掃除をしている途中で突然動くことがあるため、耳かきや綿棒が外耳道や鼓膜に当たり、けがをする危険があります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、家庭で無理に耳垢を取る必要はなく、気になる場合は耳鼻咽喉科を受診するよう案内しています。
家庭では、耳の入り口に出てきた耳垢を、タオルやガーゼで優しく拭く程度にしてください。
次のような場合は、耳鼻咽喉科へご相談ください。
・耳垢が奥にあり、家庭では取れない
・耳垢が硬く固まっている
・耳垢のため鼓膜が見えないと言われた
・耳を痛がる
・耳を頻繁に触っている
・耳だれや出血がある
・呼びかけへの反応が悪い
・テレビの音量を上げるようになった
・家庭で安全に耳掃除ができない
耳垢だけで受診しても問題ありません。
耳垢はどのくらいの間隔で診てもらえばよいですか?
耳垢のたまり方には個人差があり、すべての方が定期的に処置を受ける必要があるわけではありません。ただし、耳垢がたまりやすい方、耳垢栓塞を繰り返している方、自分で耳掃除をするのが苦手な方については、当院では次の間隔をひとつの目安としています。
・大人・高齢者:6か月ごと ・子ども:3~4か月ごと
実際の受診間隔は、診察時の耳垢の量や外耳道の状態に応じて判断しています。耳が詰まる、聞こえにくい、痛みがある、耳だれが出るなどの症状がある場合は、この間隔を待たずに受診してください。
耳掃除だけで病院に行くのは申し訳ないと考えられている方もおられますが、耳は自分で見ることができない部位であり、また耳掃除は医療行為です。ぜひ遠慮なく、ご来院ください。
さいごに
~院長からのメッセージ~
外耳道には耳垢を自然に排出させる自浄作用があるため、耳の奥を頻繁に掃除する必要はありません。家庭で耳掃除をする場合は耳の入り口から見える範囲だけにして、取れない場合は無理に触らないようにしましょう。
また、耳の違和感やつまりの原因として、突発性難聴や低音障害型感音難聴など、早期の診断と治療が必要な病気が隠れていることがあります。耳垢によるものだと自己判断しないようにしてください。耳垢が奥にある、硬くて取れない、聞こえにくい、耳が詰まるなどの症状がある場合は、ぜひお早めに当院を受診してください。
よくあるご質問
Q01.耳垢だけで耳鼻咽喉科を受診してもよいですか?
【回答】もちろん問題ありません。耳垢の除去は、耳鼻咽喉科で日常的に行っている処置です。自分で無理に取ろうとして耳垢を奥へ押し込んだり、外耳道を傷つけたりする前にご相談ください。
Q02.耳垢は1回ですべて取れますか?
【回答】多くの場合、1回で除去できますが、硬く固まった耳垢や奥まで詰まった耳垢の場合は、耳垢水でやわらかくしたり、安全のため複数回に分けて除去したりすることがあります。当院では安全な処置を優先しています。
Q03.耳掃除は毎日必要ですか?
【回答】毎日行う必要はありません。耳には耳垢を自然に外へ出す働きがあるため、耳の奥は原則として掃除不要です。家庭で耳掃除をする場合は、月1~2回程度、耳の入り口から見える範囲だけを掃除するようにしてください。
Q04.子どもの耳垢だけでも受診できますか?
【回答】もちろん受診できます。子どもは外耳道が狭く、処置中に突然動くこともあるため、家庭で無理に取ろうとすると、耳の中を傷つける危険があります。耳の奥にある耳垢や、簡単に取れない耳垢は、無理に取ろうとせず、お気軽にご相談ください。
Q05.補聴器を使用している場合はどうすればよいですか?
【回答】補聴器を使用している方は、耳垢が自然に外へ排出されにくくなり、耳垢がたまりやすくなることがありますので、定期的な受診をお勧めしています。補聴器の聞こえ方が変わったときや、ハウリングが増えたとき、補聴器の点検を受けても聞こえにくさが残るときは、耳垢が詰まっていないかも確認しましょう。
文責・監修医師

麻生耳鼻咽喉科クリニック 院長 麻生丈一朗
・医学博士
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・日本気管食道科学会専門医
福岡県飯塚市の麻生耳鼻咽喉科クリニックを継承し、小さいお子さんからご高齢の方まで、世代を問わず、幅広い年代の筑豊地域の患者様へ医療を提供。充実した検査機器による耳鼻咽喉科の一般診療に加え、日帰りでの手術加療も実施し、耳鼻咽喉科として可能な限り幅広い医療を提供している。
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