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良性発作性頭位めまい症(BPPV)とは?寝返りで起こる症状・原因・治療・受診目安
はじめに
「寝返りをした瞬間に、天井がぐるぐる回った」
「朝、ベッドから起き上がったときにめまいがした」
「上や下を向いたときだけ、急に目が回る」
このような症状の代表的な原因が、**良性発作性頭位めまい症(BPPV)**です。一般には「耳石がずれた」と言われることもあります。
耳の奥にある「耳石」が本来の位置からはがれ、三半規管に入り込むことで起こると考えられています。
良性発作性頭位めまい症は、多くの場合、生命に直接関わる病気ではありません。ただし、強いめまいや吐き気によって動けなくなったり、転倒したりすることがあります。本記事では福岡県飯塚市にある麻生耳鼻咽喉科クリニックの耳鼻咽喉科専門医が、BPPVの原因、初期症状、診断の流れ、治療法、予後、そして再発予防までを、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
まず確認したい、めまいの受診目安
救急医療機関への受診を優先する症状
次の症状がある場合は、良性発作性頭位めまい症と自己判断せず、救急医療機関への受診を優先してください。
・突然の激しい頭痛
・顔や手足のしびれ、力が入らない
・ろれつが回らない
・物が二重に見える
・意識を失った
・突然、自力で立てない、まっすぐ歩けない
・頭を動かさなくても強いめまいが続く
・繰り返し吐いて、水分が取れない
脳梗塞や脳出血などでも、同様のめまい症状を伴う場合があります。
早めに耳鼻咽喉科を受診した方がいい症状
次の症状がある場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
– めまいと同時に、急に片耳が聞こえにくくなった
– 新たな耳鳴りや耳の詰まった感じが起こった
– 寝返りや起き上がりのたびにめまいを繰り返す
– 強い回転感は治まったが、ふらつきが続いている
– 以前のめまいとは症状が違う
特に、めまいと同時に急な難聴が起こった場合は、突発性難聴やメニエール病の可能性があります。
良性発作性頭位めまい症とは?
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、特定の頭の動きによって回転性めまいが生じる疾患です。めまいを伴う疾患の中で最も頻度が高いとされており、特に40〜60代の女性に多く見られますが、年齢や性別に関わらず、誰にでも起こる可能性があります。
BPPVの特徴とめまいが起こる仕組み
内耳には、体の傾きや直線的な動きを感じ取る「耳石器」と、頭の回転を感じ取る「三半規管」があります。
耳石器には耳石という小さな結晶が無数に存在していますが、これが何らかの原因で剥がれ落ち、三半規管に入り込むことがあります。そうすると、三半規管内のリンパ液がかき乱されてしまい、寝返りなどで頭を動かした際に、本来の頭の動きとは異なる刺激が三半規管に加わり、脳に誤った情報が伝わります。これによって、回転性めまいや眼振が起こると考えられています。
発症のきっかけとなるような原因
明確な原因がない場合もありますが、以下のようなことが原因と考えられています。
・ 加齢:年齢とともに、耳石が剥がれやすくなると考えられています。
・頭部の打撲:交通事故や店頭などで、頭を打った後に発症することがあります。
・長時間の同じ姿勢:デスクワークなどで長時間、頭を動かさない状態が続くと、発症しやすいと考えられています。
・長期間の安静や入院:日常生活よりも、身体の動きが減少するため、耳石の動きが悪くなると言われています。
・女性ホルモンの影響:閉経後の女性に多くみられることから、ホルモンバランスの乱れや骨粗しょう症との関連も指摘されています。
・内耳の疾患:突発性難聴などの後遺症として発症することがあります。
・片頭痛:片頭痛を持つ人も発症しやすいと考えられています。
良性発作性頭位めまい症の主な症状
症状
良性発作性頭位めまい症では、頭の位置を変えたときに、回転性(ぐるぐるまわる)、または動揺性(フワフワする)めまいが起こります。典型例では、頭を動かして数秒後にめまいが起こり、多くは1分以内に軽くなります。ただし、障害されている三半規管や耳石の状態によっては、特定の姿勢を続けている間、1分以上めまいや眼振が続くこともあります。良性発作性頭位めまい症には複数の病型があり、すべてが同じ経過を示すわけではありません。
症状が出やすい動作
・寝返りをする
・ベッドから起き上がる
・横になる
・上を向く
・下を向く
・洗髪のために頭を下げる
・洗濯物を干すために上を向く
・美容室や歯科で頭を後ろに倒す
めまいに伴って起こりやすい症状
・吐き気
・嘔吐
・冷や汗
・動悸
・めまいが治まった後のふわふわ感
・歩行時の不安定感
通常、耳の症状(難聴、耳鳴り、耳の詰まった感じ)や神経の麻痺や意識障害といった脳神経の症状は伴いません。
「起き上がったときのめまい」は、すべて良性発作性頭位めまい症とは限らない
朝、ベッドから起き上がったときに起こるめまいでも、症状の内容によって原因が異なります。頭や体の向きを変えた瞬間に周囲が回る場合は、良性発作性頭位めまい症が疑われます。
一方、立ち上がったときに目の前が暗くなる、血の気が引く、意識が遠くなるように感じる場合は、起立性低血圧、脱水、貧血など、耳以外の原因も考えられます。
症状だけで自己判断せず、「どのような動作で起こったか」「何秒・何分続いたか」を確認することが大切です。
以前と同じ症状でも、同じ病気とは限りません
診察の際に、「以前も耳石のめまいだったので、今回も同じだと思います」と話される患者さんが少なくありません。
しかし、めまいの原因には、良性発作性頭位めまい症以外にも、以下のような様々な病気があります。
・メニエール病
・前庭神経炎
・突発性難聴
・起立性低血圧
・脳梗塞、脳出血など
「前と同じような症状だからすぐ治るだろう。」と決めつけず、毎回の診察を受け、病状を改めて確認することが大切です。BPPV診療ガイドラインでも、メニエール病、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、起立性低血圧、中枢性疾患などとの鑑別が重視されています。
検査と診断の流れ
問診
診察の際に、以下のような点を詳しく確認します。
・どのような動作でめまいが起こるか
・一回のめまいの持続時間はどのくらいか
・ぐるぐる回るようなめまいか、ふわふわするめまいか
・耳の症状(難聴、耳鳴り、耳閉感など)があるか
・頭痛、しびれ、麻痺、意識障害など、めまい以外の症状があるか
・頭部打撲や長期安静などのきっかけがないか
当院で行う眼振検査
良性発作性頭位めまい症の診断には問診が非常に重要ですが、それのみで診断を確定することはできません。頭や体の向きを変えたときに、特徴的な眼振が現れるかを調べることが重要です。
当院では赤外線CCDカメラやフレンツェル眼鏡を使用して、めまいに伴う眼球の動きである「眼振」を観察します。
眼振は、めまいが起きている時に無意識に起こる目の動きで、めまいの原因を探る重要な手がかりになります。BPPVの場合、特徴的な眼振が見られるため、多くの場合、この検査でその場で診断が可能です。
以下のような検査を行います。
・頭位変換眼振検査
・Dix-Hallpike法に相当する検査
・仰向けで頭を左右に向ける頭位眼振検査
・寝返りや起き上がりによる眼振の確認
これらの検査によって、頭がどの位置にある時にめまいが誘発されるか、どのような眼振が起こるかを確認します。
その他の検査(必要に応じて)
症状に応じて、聴力検査などを行います。
急な難聴や耳鳴りがある場合は、突発性難聴やメニエール病など、ほかの内耳疾患がないかを確認する必要があります。
症状や眼振が典型的でなく、神経症状がある場合や脳疾患が疑われる場合には、画像検査(CTやMRI)や専門医療機関での評価が必要になることがあります。
良性発作性頭位めまい症の治療
自然に改善することがあります
良性発作性頭位めまい症は、自然に改善することが多い病気です。三半規管内の耳石が自然に移動したり、細かくなったりすることで、数日から数週間で回転性めまいが軽くなることがあります。
ただし、自然と改善するかどうか、および治るまでの期間には個人差があります。
強い回転感が治まった後も、頭を動かしたときの違和感、ふわふわ感、歩行時の不安定感が残ることがあります。また、一度改善しても再発する場合があります。
薬物療法
めまい症状がひどい時期には、症状を緩和させるためにめまい止めや吐き気止め、循環改善薬、漢方薬などを処方します。ただし、これらの薬剤は根本的な原因である三半規管内に入り込んだ耳石を溶かしたり、取り除いたりするものではありません。症状の強さや全身状態を確認しながら、服用の必要性や種類、治療期間を判断します。
耳石置換法(当院では施行しておりません)
良性発作性頭位めまい症には、頭と体を決められた順序で動かし、三半規管内に入り込んだ耳石を移動させる「耳石置換法」、または「頭位治療」と呼ばれる治療があります。
障害されている三半規管や耳石の状態に応じて、Epley法やLempert法などが選択されます。
病型によって耳石置換法の有効性が示されている治療法ですが、BPPVは薬物療法で症状を改善させつつ、経過観察すると、自然に改善する場合が多いため、症状、病型、全身状態などを踏まえて、耳石置換法を行うかどうかを検討します。
強い吐き気がある急性期や、首・腰に病気がある方などでは実施できません。
めまいがあるときは安静にすべきですか?
強いめまいが起きている間は、無理に動かず、その場に座るか横になってください。転倒を防ぐため、階段や浴室など危険な場所から離れ、症状が治まるのを待ちます。
一方、強い症状が落ち着いた後まで、何日も寝たままでいる必要はありません。転倒に注意しながら、少しずつ通常の生活へ戻していきましょう。
症状がある間は、次の行動を控えてください。
・自動車や自転車の運転
・高所作業
・脚立の使用
・転倒する危険がある運動
・一人での長時間の入浴
・急に頭を動かす動作
特に高齢の方では、夜間のトイレや起床時の転倒に注意してください。ベッドの周囲を整理し、必要に応じて照明や手すりを利用しましょう。
治るまでの期間と再発
良性発作性頭位めまい症は、数日から数週間で症状が軽快し、およそ1~2ヶ月程度で改善することが多い疾患ですが、病型や症状の強さによっては、改善までにより長い期間がかかることがあります。また、一度治った後に再発することも珍しくなく、再発率は25~50%程度とされています。
日常生活での注意点と再発予防のポイント
良性発作性頭位めまい症は、基本的に「動かさない」よりも「適度に動かす」方が早く治ります。
- 安静にしすぎない:めまいがあるからといって、過度に安静にしすぎると、かえって耳石が三半規管に留まりやすくなります。無理のない範囲で、日常生活に戻り、体を適度に動かすことが大切です。
- 就寝時の工夫:長時間同じ向きで寝ていると、耳石がたまりやすくなります。寝返りを適度に打つようにしましょう。また、枕を少し高めにして、頭の位置を高くして寝ることも予防に役立つ場合があります。
- めまいを誘発する動きを避ける:急性期は、めまいを引き起こすような急激な頭の動き(急に上を向く、急に横を向くなど)はできるだけ避けましょう。
- 規則正しい生活:睡眠不足や疲労、ストレスは、自律神経の乱れにつながり、めまいを悪化させる誘因になります。規則正しい生活を心がけましょう。
さいごに
~院長からのメッセージ~
良性発作性頭位めまい症は、特定の頭の動きによってめまいが引き起こされる病気です。多くは自然に改善しますが、一度治まった後に再発することも少なくありません。
「以前も耳石のめまいだったから、今回も同じだろう」と考えて受診を先延ばしにしたり、以前処方された薬を自己判断で服用したりする患者さんがいらっしゃいます。しかし、同じように感じるめまいであっても、原因となる病気が毎回同じとは限りません。
福岡県飯塚市の麻生耳鼻咽喉科クリニックでは、詳しい問診、眼振検査、必要に応じた聴力検査を行い、良性発作性頭位めまい症をはじめとする耳の病気を調べるとともに、脳疾患などの危険な病気が疑われないかを確認します。
めまいを感じたときは、「このくらいなら大丈夫だろう」、「そのうち治るだろう」、「前と同じだろう」と決めつけず、早めに耳鼻咽喉科を受診し、正確な診断と症状に応じた適切な治療を受けることが大切です。
よくあるご質問
Q01.良性発作性頭位めまい症は自然に治りますか?
【回答】自然に軽快することがあります。数日から数週間で改善する場合がありますが、治るまでの期間には個人差があります。症状が続く場合や、典型的でない症状がある場合は、ほかの病気がないか再評価が必要です。
Q02.めまいは一回何秒くらい続きますか?
【回答】典型的には、頭を動かしてから数秒後に始まり、強い回転性めまいは1分以内に軽くなります。ただし、障害されている三半規管や耳石の状態によっては、特定の姿勢で1分以上続くこともあります。また、回転感が治まった後も、ふわふわするめまいが持続する場合があります。
Q03.薬を飲めば耳石は元に戻りますか?
【回答】めまい止めや吐き気止めは症状を軽くする目的で使われますが、薬が耳石を直接元の位置へ戻すわけではありません。耳石に対する治療としては、病型に応じた耳石置換法があります。
Q04.めまいがある間は寝ていた方がよいですか?
【回答】強い発作中は無理に動かず、転倒しないよう安全な場所で休んでください。一方、症状が落ち着いた後まで、一日中寝たままにする必要はありません。安全を確認しながら、少しずつ通常の生活へ戻します。
Q05.自宅でエプリー法をしてもよいですか?
【回答】医療機関でBPPVと判断され、障害側や方法について指導を受けた方では、自宅で行う場合があります。しかし、左右や半規管を誤ると効果が得られず、首や腰へ負担がかかる可能性もあります。診断前の自己流の体操は避けてください。
Q06.良性発作性頭位めまい症とメニエール病はどう違いますか?
【回答】BPPVは寝返りなどの頭位変化で、短いめまいを繰り返すのが典型です。通常は難聴や耳鳴りを伴いません。メニエール病は、頭位と関係なく数十分から数時間のめまいが起こり、難聴、耳鳴り、耳閉感を伴うことがあります。
Q07.BPPVでも難聴は起こりますか?
【回答】BPPVだけであれば、急な難聴は典型的ではありません。めまいとともに聞こえが悪くなった場合は、突発性難聴やメニエール病などを考える必要があるため、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
Q08.一度治っても再発しますか?
【回答】再発することがあります。数か月後や数年後に、再び頭位性めまいが起こる場合があります。ただし、再発しためまいが毎回BPPVとは限らないため、症状が異なる場合は再診してください。
Q09.内科で治らなかっためまいは耳鼻咽喉科を受診すべきですか?
【回答】内科を受診した後もめまいが続く場合や、寝返り・起き上がりなどで症状が誘発される場合、難聴や耳鳴りを伴う場合は、耳鼻咽喉科での評価をご検討ください。耳鼻咽喉科では、眼振検査や聴力検査を行い、内耳の病気が関係していないかを確認します。
Q10.めまいで救急車を呼ぶ目安はありますか?
【回答】激しい頭痛、手足や顔のしびれ・麻痺、ろれつが回らない、物が二重に見える、意識を失う、突然自力で立てない・まっすぐ歩けないといった症状がある場合は、救急要請を含めて早急に対応してください。
参考文献
1. 一般社団法人日本めまい平衡医学会編『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン2023年版』金原出版、2023年
2. 藤本千里「めまい疾患の診断と治療」日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報、2024年
3. 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「めまいの原因・治療法そして、めまい治療に関する誤解」
文責・監修医師

麻生耳鼻咽喉科クリニック 院長 麻生丈一朗
・医学博士
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・日本気管食道科学会専門医
福岡県飯塚市の麻生耳鼻咽喉科クリニックを継承し、小さいお子さんからご高齢の方まで、世代を問わず、幅広い年代の筑豊地域の患者様へ医療を提供。充実した検査機器による耳鼻咽喉科の一般診療に加え、日帰りでの手術加療も実施し、耳鼻咽喉科として可能な限り幅広い医療を提供している。
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